著者:Kaichun Yang, Wyatt Peele, Pengzhan Liu, Jianping Xia, Venkata Dandey, Ruoyu Zhong, Ke Jin, Kedar Sharma, Abigail J. Watson, Shujie Yang, Ying Chen, Aryan Agahtehrani, Shu Nakajima Lan, Peiran Zhang, Zhenhua Tian, Mingyuan Liu, Elizabeth Viverette, Xianchen Xu, Qian Wu, Mario J. Borgnia, Luke P. Lee, Tony Jun Huang
Proceedings of the National Academy of Sciences · 掲載日・巻号日:2021-11-23
著者:Joël S. Bloch, Somnath Mukherjee, Julia Kowal, Ekaterina V. Filippova, Martina Niederer, Els Pardon, Jan Steyaert, Anthony A. Kossiakoff, Kaspar P. Locher
著者:Kartik Ayyer, Oleksandr M. Yefanov, Dominik Oberthür, Shatabdi Roy-Chowdhury, Lorenzo Galli, Valerio Mariani, Shibom Basu, Jesse Coe, Chelsie E. Conrad, Raimund Fromme, Alexander Schaffer, Katerina Dörner, Daniel James, Christopher Kupitz, Markus Metz, Garrett Nelson, Paulraj Lourdu Xavier, Kenneth R. Beyerlein, Marius Schmidt, Iosifina Sarrou, John C. H. Spence, Uwe Weierstall, Thomas A. White, Jay-How Yang, Yun Zhao, Mengning Liang, Andrew Aquila, Mark S. Hunter, Joseph S. Robinson, Jason E. Koglin, Sébastien Boutet, Petra Fromme, Anton Barty, Henry N. Chapman
著者:Hao Zhang, Rabindra V. Shivnaraine, Lu Ren, Phung N. Thai, Remi Janicot, Wenjuan Zhu, Rihua Huang, Dirk H. Siepe, Chengyi Tu, Wenqiang Liu, Marcin Maziarz, Jonathan C. Deutsch, Yu Liu, Chun Liu, Danielle H. Shin, Hyeonyu Kim, Mark Chandy, Marian Kalocsay, Nipavan Chiamvimonvat, Mikel Garcia-Marcos, Brian K. Kobilka, Joseph C. Wu
Nature Reviews Drug Discovery · 掲載日・巻号日:2026-09-21
著者:Liliana Halip, Sorin Avram, John P. Overington, Bissan Al-Lazikani, Ramona Curpan, Suman Sirimulla, Alexei Pushechnikov, Andrea Rosario Beccari, Nikolay Savchuck, Tudor I. Oprea
今週は、2026年9月21日から27日までにZoteroの個人ライブラリへ登録した学術文献と研究用ソフトウェア、計19件をまとめました。集計は北京時間に基づき、登録日時で判定しています。テーマ別に分け、各テーマ内は登録日の新しい順に並べ、その他の項目は最後に掲載しています。
以下はAIが抄録をもとにまとめたものです。一部の抄録は外部情報で補足しており、論文全文を精読したものではありません。掲載日・巻号日は各文献の記録に基づいており、今週発表されたことを示すものではありません。書籍の章とソフトウェアについては別途明記しています。5-HT7の総説は以前にも取り上げましたが、今週あらためて登録したため、今回の対象に含めています。
クライオ電子顕微鏡の試料調製と放射線損傷(6件)
01 · 音響流体クライオ電子顕微鏡により、均一で高品質な試料を作製するための粒子をその場で操作
Science Advances · 掲載日・巻号日:2026-09-25
著者:Kaichun Yang, Wyatt Peele, Pengzhan Liu, Jianping Xia, Venkata Dandey, Ruoyu Zhong, Ke Jin, Kedar Sharma, Abigail J. Watson, Shujie Yang, Ying Chen, Aryan Agahtehrani, Shu Nakajima Lan, Peiran Zhang, Zhenhua Tian, Mingyuan Liu, Elizabeth Viverette, Xianchen Xu, Qian Wu, Mario J. Borgnia, Luke P. Lee, Tony Jun Huang
クライオ電子顕微鏡の試料調製では、粒子の分布に偏りがあると利用できる粒子が減り、画像にも影響します。濃度の低い複合体や不安定な複合体は特に影響を受けやすいものです。著者らは、非接触の音響操作を通常の急速凍結工程に組み込んだ音響流体クライオ電子顕微鏡法ACEを提案しています。グリッドを振動させ、局所的な音響流を起こすことで、試料中の粒子分布を変える仕組みです。リポソームとアポフェリチンを用いた実験では、検証した条件下で局所粒子密度が最大約4倍になり、構造を保ちながら画像品質も向上しました。試料調製の段階で粒子分布を積極的に調整する新たな方法ですが、最大の増加率は特定の系で得られたもので、すべての試料で同様の効果が見込めるわけではありません。対象となる複合体の安定性も評価が必要です。
注目点 · 凍結前に音響操作で粒子の局所分布を調整し、特定の試料で利用可能な粒子密度を高められる。
DOI:10.1126/sciadv.aeh5900
02 · 閉じ込め構造によるクライオ電子顕微鏡の氷厚制御
Nature Methods · 掲載日・巻号日:2026-09-25
著者:Liming Zheng, Jiling Song, Xiaole Zhao, Jiacong Cao, Jie Xu, Zhengni Wang, Chenhui Zhang, Weiyu Sun, Buhang Chen, Xiaoyin Gao, Haonan Liu, Junhao Yang, Yu Xu, Luzhao Sun, Zhaohe Dai, Xiaoding Wei, Nan Liu, Hailin Peng, Hong-Wei Wang
氷の厚さはクライオ電子顕微鏡の画像品質を大きく左右しますが、凍結前の液膜が不安定なため、正確な制御は困難です。著者らは、100ナノメートル未満の液膜が不安定になることが重要な要因だと指摘し、設計したグラフェン製の液溜め構造で液膜を空間的に制限しました。液溜めの深さを変えることで氷厚を調節でき、広い範囲で均一性と再現性の高い氷層が得られます。抄録によると、複数の高分子試料でコントラストが向上し、粒子の動きが抑えられ、配向分布も改善され、高分解能再構成に役立ちました。氷厚の制御を液膜の安定化機構と結びつけた点が重要です。具体的な効果は、対象粒子、支持材、試料調製条件ごとに検証する必要があります。
注目点 · グラフェン構造で液膜を閉じ込め、経験頼みだった氷厚調整を幾何学的な制約に基づく制御へと進める。
DOI:10.1038/s41592-026-03244-1
03 · クライオ電子顕微鏡グリッド上での濃縮戦略:低存在量・難標的に向けた親和性機能化支持膜
Acta Crystallographica Section D: Structural Biology · 掲載日・巻号日:2026-10-01
著者:P. Mili, O. J. Chetia, U. Das
この総説は、存在量が少なく扱いの難しい標的をグリッド上で濃縮する方法を取り上げています。膜タンパク質、内在性複合体、クロマチン関連複合体、一過性のシグナル中間体は、試料量の不足、解離、変性、配向の偏りといった問題に直面しがちです。親和性機能化した支持膜を使えば、ガラス化前に粒子を選択的に捕捉・濃縮し、局所濃度や回収率を高められます。手法によっては気液界面への露出も抑えられます。著者らは、Ni–NTA脂質単分子膜、ストレプトアビジン修飾グリッド、抗体支持体、グラフェン誘導体、磁性ナノ粒子などを比較し、それぞれの利点と限界を論じています。支持膜が受動的な土台から積極的に働く生化学的界面へと変わりつつある一方、捕捉法は標的の性質に合わせる必要があり、濃縮しても常に完全な天然状態が保たれるとは限りません。
注目点 · 親和性グリッドを選択的な捕捉界面として活用し、低存在量・不安定な複合体の試料調製に新たな選択肢をもたらす。
DOI:10.1107/S2059798326009605
04 · 第15章 ― クライオ電子顕微鏡における放射線損傷
Cryo-EM Part A Sample Preparation and Data Collection · 掲載日・巻号日:2010-01-01
著者:Lindsay A. Baker, John L. Rubinstein
この書籍の章では、クライオ電子顕微鏡における放射線損傷と、分解能への影響を概説しています。電子線は信号を記録する一方で試料を損傷します。初期にはイオン化や結合切断、フリーラジカルの生成が起こり、その後、二次電子やラジカルが移動してさらなる反応を引き起こします。気体の発生によって、より大きな形態変化が生じることもあります。そのため、統計的に十分な信号を得ることと、試料の損傷を抑えることには根本的なトレードオフがあります。本章では、電子線照射量の測定、吸収線量の推定、加速電圧、試料温度、露光条件など、実務上の問題を扱い、低温や線量制限が重要な理由を説明しています。画像取得のトレードオフを理解するための基本的な枠組みであり、温度を下げたり露光を延ばしたりすれば必ず構造の質が向上する、という単純な話ではありません。
注目点 · 放射線損傷は電子線照射中を通じて進むため、画像取得では信号の統計精度と試料の損傷のバランスを取る必要がある。
DOI:10.1016/S0076-6879(10)81015-8
05 · 液体ヘリウム温度を利用したクライオ電子顕微鏡における放射線損傷の低減
Proceedings of the National Academy of Sciences · 掲載日・巻号日:2025-04-29
著者:Joshua L. Dickerson, Katerina Naydenova, Mathew J. Peet, Hugh Wilson, Biplob Nandy, Greg McMullan, Robert Morrison, Christopher J. Russo
理論上、試料をさらに冷却すれば放射線損傷を抑えられます。しかし、従来の液体ヘリウム温度での単粒子解析では、期待された効果が十分に得られていませんでした。著者らは、この条件で情報が失われる要因を特定して対処し、ナノメートルスケールの電子線照射と小孔のある金支持体を組み合わせました。その結果、露光中の各フレームで、液体窒素温度の場合を上回る情報量が得られました。一方、小孔の縁が画像に写り込むこと、損傷したタンパク質が縁に集まりやすいこと、水や支持箔への不要な照射をできるだけ減らす必要があることも指摘しています。低温の効果を引き出すには、温度を下げるだけでなく、照射、支持体、粒子分布を組み合わせて考える必要があります。より低温で損傷を抑える可能性を活かすには、新しい顕微鏡や試料支持体の設計にも、これらの要因を反映させることが重要です。
注目点 · 液体ヘリウム温度での撮像効果を引き出すには、ナノビーム照射と支持体の設計が欠かせない。冷却するだけでは不十分。
DOI:10.1073/pnas.2421538122
06 · 膜タンパク質のクライオ電子顕微鏡解析を補助する、汎用ナノボディ結合Fabモジュールの開発
Proceedings of the National Academy of Sciences · 掲載日・巻号日:2021-11-23
著者:Joël S. Bloch, Somnath Mukherjee, Julia Kowal, Ekaterina V. Filippova, Martina Niederer, Els Pardon, Jan Steyaert, Anthony A. Kossiakoff, Kaspar P. Locher
小型膜タンパク質はクライオ電子顕微鏡で位置合わせしにくく、十分に安定で識別しやすい補助構造が必要です。著者らが開発したNabFabは、ナノボディの骨格に高い親和性で結合しながら、ナノボディと標的タンパク質の結合をできるだけ妨げません。認識ループを適合する骨格に移植することで、由来や標的の異なるナノボディにも同じFabモジュールを使えるようにしました。質量を増やして位置決めの目印とすることで、約50 kDaの小型膜タンパク質2種の高分解能構造を解明しています。さらに抗Fabナノボディを結合させることで、初期の三次元再構成も助けられました。この補助モジュールの再利用性が示されましたが、新たな標的に適用する際には、結合関係や剛性、構造が保たれるかを確認する必要があります。
注目点 · NabFabは共通のナノボディ骨格を認識し、小型膜タンパク質の質量を増やして位置合わせを助ける、再利用可能なモジュールとなる。
DOI:10.1073/pnas.2115435118
結晶学的イメージングとデータ処理(3件)
07 · 不完全な結晶を用いた高分子の回折イメージング
Nature · 掲載日・巻号日:2016-02
著者:Kartik Ayyer, Oleksandr M. Yefanov, Dominik Oberthür, Shatabdi Roy-Chowdhury, Lorenzo Galli, Valerio Mariani, Shibom Basu, Jesse Coe, Chelsie E. Conrad, Raimund Fromme, Alexander Schaffer, Katerina Dörner, Daniel James, Christopher Kupitz, Markus Metz, Garrett Nelson, Paulraj Lourdu Xavier, Kenneth R. Beyerlein, Marius Schmidt, Iosifina Sarrou, John C. H. Spence, Uwe Weierstall, Thomas A. White, Jay-How Yang, Yun Zhao, Mengning Liang, Andrew Aquila, Mark S. Hunter, Joseph S. Robinson, Jason E. Koglin, Sébastien Boutet, Petra Fromme, Anton Barty, Henry N. Chapman
タンパク質結晶の構造解析では通常ブラッグ回折を利用しますが、結晶格子の不完全さが生む連続回折は見過ごされがちです。著者らは光化学系IIを例に、格子内の位置の乱れがデータ品質を下げるだけでなく、分子構造についての追加情報を保つことを示しました。従来の解析で得た分子包絡を制約条件として使い、測定可能なブラッグピークだけでは約4.5 Åに限られていた情報から、二量体を約3.5 Åでイメージングしました。連続回折を適切に扱えば、離散的な回折ピークだけを解析する場合の分解能限界を超えられる可能性があります。不完全な結晶の有用性を見直す成果ですが、結果は乱れの種類や分子全体の構造などの条件に左右されます。質の低い結晶なら何でも同じように改善できるという意味ではありません。
注目点 · 格子の乱れによる連続回折から追加の構造情報を得られ、不完全な結晶も高分解能イメージングに活用できる。
DOI:10.1038/nature16949
抄録の補足情報
08 · CrystalPilot:XDS結晶学データ処理のためのブラウザーインターフェース
Zenodo(ソフトウェア) · 掲載日・巻号日:2026-09-26
著者:Mikael Elias
ソフトウェアの概要:CrystalPilotは、XDSによる結晶学データ処理のためのブラウザーインターフェースで、Zenodoに登録されたソフトウェアです。学術誌の論文ではありません。プロジェクト管理、入力ファイルの編集、指数付け・積分結果の解析、分解能カットオフの判断、スケーリング結果の確認を一か所で行えます。単一データセットまたは複数データセットの自動処理、フレーム表示、Table 1の作成なども備えています。学習向けのワークフローも設計に含まれています。公開された抄録は主に機能を列挙しており、独立した性能比較や処理精度のデータは示していないため、他のインターフェースより優れているとは判断できません。繰り返し作業を減らし、XDSの処理手順を整理する用途が期待されますが、データの質やパラメーターの選択は出力の診断結果も踏まえて判断する必要があります。
注目点 · XDSのプロジェクト管理、パラメーター設定、診断、バッチ処理をブラウザー上に集約。
DOI:10.5281/zenodo.22980310
09 · 合理設計されたシアン蛍光タンパク質mJuniperの、思いがけない結晶構造
Acta Crystallographica Section F: Structural Biology Communications · 掲載日・巻号日:2026-10-01
著者:A. Aydin, N. Fraikin, P. Lagoutte, C. Lesterlin, L. Terradot
mJuniperは細菌のイメージング用に最適化された単量体シアン蛍光タンパク質で、成熟が速く、経時観察に適しています。著者らは当初、別の標的タンパク質の溶解性を高める目的でmJuniperを使っていましたが、構造解析を試みたところ、思いがけずmJuniper自体の高分解能結晶構造を得ました。典型的なβバレル構造に加えて、発色団に2種類の回転異性体が観察されました。抄録ではこの違いを、近傍で生じた特異的な放射線損傷と関連づけています。この成果はイメージングツールの構造情報を補う一方、結晶で見られる局所的な複数構造には、測定過程による変化が含まれる可能性も示しています。2つの状態がどちらも未照射条件下での天然の機能状態を反映していると、直接証明するものではありません。
注目点 · mJuniperの予期せぬ結晶化で構造情報が得られた一方、放射線損傷が発色団の局所構造を変えうることも示された。
DOI:10.1107/S2053230X26009052
セロトニン受容体と神経精神疾患治療薬(3件)
10 · うつ病治療における5-HT7受容体拮抗薬の可能性:薬理学およびバイオエンジニアリングの視点
Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry · 掲載日・巻号日:2026-08-30
著者:Arghya Kusum Dhar, Ruchi Keswani, Kuttiappan Anitha, Gauri Pathak, Aryaa Nigade, Shvetank Bhatt
この総説は、うつ病研究における5-HT7受容体拮抗の可能性を論じています。この受容体は気分、概日リズム、認知に関与し、主にGαs/cAMP経路を介してシグナルを伝えますが、ほかの共役様式も報告されています。著者らは、選択的拮抗薬がげっ歯類の行動モデルで抗うつ様の効果を示した証拠をまとめ、生物工学的な実験系、ヒトに近いモデル、中枢を標的とする薬物送達が機序の理解にどう役立つかを論じています。受容体は末梢と中枢の両方に分布するため、介入する組織の選択性も重要です。現時点の証拠はこの方向の研究を後押しするものですが、動物実験での行動変化を患者の症状改善と同一視することはできず、臨床応用の方針を定めるにも十分ではありません。
注目点 · 5-HT7拮抗薬の臨床応用を見据えた研究では、ヒトに近いモデル、組織選択性、薬物送達を考慮する必要がある。
DOI:10.1016/j.pnpbp.2026.111915
11 · 構造に基づくサブタイプ選択的な幻覚剤類似体の設計
Nature Communications · 掲載日・巻号日:2026-09-17
著者:Huiqiong Li, Lingjie Tang, Jinfeng Zhang, Bing Meng, Dongmei Cao, Yujin Chen, Jing Yu, Huan Wang, Zhi-Jie Liu, Sheng Wang, Jianjun Cheng
古典的な幻覚剤に関連する薬剤の開発では、5-HT2Aへの作用を保ちつつ、心臓弁のリスクに関連する5-HT2Bの活性化を避けることが目標です。著者らは2種類の受容体のリガンド結合ポケットを比較し、重要な違いをもとに構造に基づくモデルを構築。5-HT2Aを活性化し、5-HT2Bを阻害する2系列の候補化合物を得ました。複数の受容体・リガンドのクライオ電子顕微鏡構造がサブタイプ選択性の説明を裏づけており、一部の候補は動物モデルで抗うつ様の効果も示しました。受容体の構造差と機能選択性を結びつけ、標的外受容体への作用を減らす設計の手がかりを示しています。ただし、受容体選択性や動物での行動だけでは、臨床上の安全性や有効性は確立できず、さらなる検証が必要です。
注目点 · 類似受容体の結合ポケットを比較することで、5-HT2Aを活性化しつつ5-HT2Bを阻害する候補化合物の設計につながる。
DOI:10.1038/s41467-026-77658-y
12 · 5-HT2A受容体が5-HT2B受容体より優先的に活性化される仕組み
Nature Communications · 掲載日・巻号日:2026-09-17
著者:Lingjie Tang, Xin Ji, Yumeng Wang, Dongmei Cao, Huiqiong Li, Licong He, Jianjun Cheng, Sheng Wang
この研究では、似たリガンドでも5-HT2Aと5-HT2Bで異なる機能を示す理由をさらに分析しています。著者らは側方および拡張結合領域を系統的に調べ、局所的な立体障害や構造上の制約がリガンドの向きを変え、それによって受容体シグナルも変化すると指摘しています。この知見をもとに、異なる化学骨格に結合領域との相互作用や骨格の調整を組み合わせ、5-HT2Aの活性化を高めながら5-HT2Bの活性を抑える設計を探りました。代表的な候補化合物と両受容体の複合体を捉えたクライオ電子顕微鏡構造が、提案された機序を裏づけています。サブタイプ選択性の構造的な根拠を補う成果ですが、機序の説明が妥当でも副作用がすべて解消されたことにはなりません。治療上の価値は、より包括的な薬理学的・臨床的研究で評価する必要があります。
注目点 · 結合ポケットの空間的制約がリガンドの向きを介してシグナルに影響する。5-HT2Aと5-HT2Bの活性化を区別するための機序の枠組みを示す。
DOI:10.1038/s41467-026-77659-x
細胞内構造と時間分解クライオ電子線トモグラフィー(2件)
13 · 最小細菌の単一細胞ビジュアルプロテオミクスが、遺伝子発現装置の構造的な連携を明らかに
Cell · 掲載日・巻号日:2026-09-25
著者:Joseph M. Dobbs, Rasmus K. Jensen, Julia Mahamid
この研究ではクライオ電子線トモグラフィーを用い、野生型および抗生物質処理後の肺炎マイコプラズマ細胞を観察しました。翻訳の開始、伸長、再利用の各段階を含む140種類の構造像を解析しています。複数の転写・翻訳複合体を細胞内で観察した結果、著者らは転写産物を通す仕組みに関連した翻訳再開始モデルを提案し、転写・翻訳・膜結合を連携させる超複合体の構造的証拠を示しました。また、膜に結合したリボソーム大サブユニットが多数見つかり、新たな翻訳の開始条件に応じて膜から放出されるのではないかと推測しています。遺伝子発現装置を細胞内の空間的な文脈に置いて見ることで、異なる過程の間に複数層の調節関係があることが示されました。ただし、再開始や膜からの放出についての解釈は、直接観察された構造とは区別して考える必要があります。
注目点 · 細胞内の構造像から転写・翻訳・膜結合のつながりが見え、分子を単独で調べるだけでは捉えにくい配置関係が明らかになった。
DOI:10.1016/j.cell.2026.08.054
14 · 一過性の細胞プロセスを時間分解クライオ電子線トモグラフィーで捉える戦略
Current Opinion in Structural Biology · 掲載日・巻号日:2026-12-01
著者:Arjen J. Jakobi
クライオ電子線トモグラフィーでは、ガラス化した時点での細胞内構造を観察できます。時間分解研究では、こうした静的な観察を、明確な刺激や一過性の過程の各段階と結びつけることを目指します。この総説は、時間情報を取り入れる4つの実験アプローチを概説し、信頼できる構造解釈と時間的な解釈を得るための条件を論じています。どの方法でも、標的状態を再現性よく作り出すか確実に識別できること、各段階を比較するのに十分な試料を得ることが重要です。また、状態の選択、時間との対応づけ、結果の解釈という課題は、いずれの方法にもあります。時間分解クライオ電子線トモグラフィーを、単に断層像に時間ラベルを付ける作業ではなく、実験設計とサンプリングの問題として捉える点がこの総説の意義です。抄録では4つのアプローチの詳細が示されていないため、ここでは具体的な分類を補いません。
注目点 · 信頼できる時間分解クライオ電子線トモグラフィーには、識別可能な状態、明確な時間との対応、比較に十分な試料が欠かせない。
DOI:10.1016/j.sbi.2026.103385
有機カチオン輸送(2件)
15 · OCT1・OCT2による多様な薬物・異物認識の分子基盤
Nature Structural & Molecular Biology · 掲載日・巻号日:2023-07
著者:Yang Suo, Nicholas J. Wright, Hugo Guterres, Justin G. Fedor, Kevin John Butay, Mario J. Borgnia, Wonpil Im, Seok-Yong Lee
OCT1とOCT2はそれぞれ肝臓と腎臓で多様な有機カチオンの取り込みや排出に関わり、薬物の体内動態や相互作用に重要な役割を果たします。著者らは、2種類の輸送体のコンセンサス変異体について、リガンド非結合、基質結合、薬物結合の状態を含む4つのクライオ電子顕微鏡構造を解明しました。構造は外向き開状態と外向き閉状態を捉えています。機能実験、分子ドッキング、分子動力学シミュレーションを組み合わせ、同じ輸送体が構造の異なるカチオンをどう受け入れるのか、細胞外側のゲートがどう閉じるのかを分析しました。多様な基質を認識する構造原理を示し、輸送体に関わる薬物相互作用を今後理解するための手がかりとなります。ただし、コンセンサス変異体と限られた構造状態を用いた研究であるため、天然型の輸送体や具体的な薬物の組み合わせについては個別の検証が必要です。
注目点 · OCT1/2の複数状態の構造から、多様なカチオンの認識と細胞外ゲートの閉鎖機構が結びついた。
DOI:10.1038/s41594-023-01017-4
16 · OCTN1を介した輸送とがん細胞増殖の構造的・機序的知見
Nature Communications · 掲載日・巻号日:2026-09-14
著者:Binghong Xu, Shengjian Liang, Ziyu Wang, Xiaoyu Zhou, Liuying Wang, Qinqin Liang, Xiaoke Liu, Wei Guo, Sai Shi, Cheng Zhu, Sheng Ye, Zhiyong Lou, Yaxin Wang
OCTN1はエルゴチオネインなどの代謝物や複数の薬物の膜輸送に関わり、その異常はがんに関わる過程とも関連しています。著者らは、リガンド非結合状態とエルゴチオネイン結合状態にあるヒトOCTN1のクライオ電子顕微鏡構造を解明し、基質の結合領域を特定するとともに、ナトリウム依存性輸送に必要な構造変化を分析しました。構造に基づくバーチャルスクリーニングでは、メベンダゾールがこの輸送体を阻害することも見いだされ、関連実験では子宮頸がん細胞と肺がん細胞の増殖抑制が観察されました。この研究は基質認識の機序と候補薬の探索を結びつけ、OCTN1を標的とする研究の根拠を示しています。ただし、細胞増殖の結果だけで患者への治療効果が証明されるわけではありません。薬剤の作用における他の標的の寄与や、生体内での実際の効果は、さらに切り分けて検証する必要があります。
注目点 · OCTN1の構造からエルゴチオネインの認識機構が明らかになり、輸送阻害とがん細胞増殖の関係を探る出発点が得られた。
DOI:10.1038/s41467-026-77727-2
その他の文献(3件)
17 · 心臓線維化の治療に向けた、非典型的なGタンパク質共役受容体シグナル経路の標的化
Science · 掲載日・巻号日:2026-09-24
著者:Hao Zhang, Rabindra V. Shivnaraine, Lu Ren, Phung N. Thai, Remi Janicot, Wenjuan Zhu, Rihua Huang, Dirk H. Siepe, Chengyi Tu, Wenqiang Liu, Marcin Maziarz, Jonathan C. Deutsch, Yu Liu, Chun Liu, Danielle H. Shin, Hyeonyu Kim, Mark Chandy, Marian Kalocsay, Nipavan Chiamvimonvat, Mikel Garcia-Marcos, Brian K. Kobilka, Joseph C. Wu
著者らはヒトiPS細胞由来の心臓細胞を用いた薬剤スクリーニング系を構築し、候補化合物を初代培養線維芽細胞、三次元心臓組織、心不全動物モデルで検証しました。スクリーニングで得られたCGS15943は、線維芽細胞の活性化と線維化関連遺伝子の発現を抑制しました。機序の解析から、異なるアデノシン受容体は典型的なGαとの共役様式こそ異なるものの、共通してGβγを介してPI3K–AKTおよびYAPシグナルに合流し、線維化を促す経路を形成することが分かりました。単一サブタイプを標的とするより、複数を同時に阻害する方が効果的で、これまでのサブタイプ別研究で結果が一致しなかった理由を説明できる可能性があります。この共通シグナル経路は有望な標的候補ですが、細胞やマウスでの改善は、ヒトでの抗線維化効果が確立されたことを意味しません。
注目点 · 複数のアデノシン受容体がGβγを介した線維化促進シグナルに合流し、併用阻害の機序的根拠を示す。
DOI:10.1126/science.aej5896
18 · 変わり続ける創薬標的の全体像
Nature Reviews Drug Discovery · 掲載日・巻号日:2026-09-21
著者:Liliana Halip, Sorin Avram, John P. Overington, Bissan Al-Lazikani, Ramona Curpan, Suman Sirimulla, Alexei Pushechnikov, Andrea Rosario Beccari, Nikolay Savchuck, Tudor I. Oprea
この25年で、遺伝学、ゲノミクス、プロテオミクス、データ技術の発展により創薬のあり方が変わり、治療法も従来の低分子薬や天然物由来化合物の枠を超えて広がってきました。この総説は、創薬標的の変化を整理・定量し、どのような生体分子を介して薬が治療効果をもたらすのか、標的の数や種類がどう変化してきたのかをまとめています。著者らが集計した範囲には、1,702種類の薬剤によって調節される686種類の生体分子が含まれます。また、新たな治療法が「創薬可能性」の境界をどう広げているかも論じています。これらの数字は総説で採用された集計方法に基づくもので、潜在的な標的すべての総数ではありません。特定の疾患への治療助言というより、標的選択と技術発展の長期的な関係を理解するための文献です。
注目点 · 新たな治療法とオミクス技術が標的の範囲を広げ、「創薬可能性」の概念も変わり続けている。
DOI:10.1038/s41573-026-01530-3
19 · 健康と疾患におけるレチノイン酸
Signal Transduction and Targeted Therapy · 掲載日・巻号日:2026-09-22
著者:Maria Teresa De Angelis, Vincenzo Dattilo, Niccolò Vono, Valentina Lise, Michela Reda, Carmela De Marco, Antonia Rizzuto, Francesco Trapasso, Giuseppe Viglietto, Gianluca Santamaria
レチノイン酸はビタミンAの活性代謝物で、胚発生や成体組織の恒常性、多様な疾患過程に関与します。この総説では、合成、分解、受容体シグナル、経路間の相互作用を複数の臓器の文脈で取り上げ、上皮の完全性、幹細胞、免疫、代謝などの機能を論じています。腫瘍におけるレチノイン酸の作用は状況に左右され、分化を促す一方、特定の遺伝的背景や微小環境のもとでは幹細胞性を支えることもあります。オルガノイド、単一細胞解析、空間オミクスによって、局所や細胞種ごとの反応が明らかになりつつあり、著者らは組織や病期に応じたレチノイン酸の状態を捉える枠組みを提案しています。層別化した研究に役立つ可能性がありますが、治療への幅広い応用には、薬剤耐性、薬物動態、組織ごとの差が課題として残ります。これまでの成功例をあらゆる疾患に当てはめることはできません。
注目点 · レチノイン酸の作用は組織、細胞の状態、微小環境によって異なるため、精密な介入にはその違いを見極める必要がある。
DOI:10.1038/s41392-026-03055-y