著者:Kai Wang, Snezana T. Dimova, John N. Hanson, Abhishek Thakur, Youwei Xu, Yini Liu, Amy E. Moritz, Alexander Goldberg, Bing Xie, Jayachandra Rayadurgam, Feijun Wang, Ashley N. Nilson, Kathryn D. Luderman, R. Benjamin Free, Wen Hu, Jian Zhang, H. Eric Xu, Kevin J. Frankowski, Yue Wang, Lei Shi, David R. Sibley, Youwen Zhuang
著者:Sijie Huang, Heng Liu, Yujin Wu, Joao M. Braz, Divya Kranthi, Brendan W. Hall, Xinyue Zhang, Dmytro S. Radchenko, Yurii S. Moroz, John J. Irwin, Allan I. Basbaum, H. Eric Xu, William C. Wetsel, Brian K. Shoichet
著者:Kejia Wu, Hanlun Jiang, Derrick R. Hicks, Caixuan Liu, Edin Muratspahić, Theresa A. Ramelot, Yuexuan Liu, Kerrie McNally, Sebastian Kenny, Andrei Mihut, Amit Gaur, Brian Coventry, Wei Chen, Asim K. Bera, Alex Kang, Stacey Gerben, Mila Ya-Lan Lamb, Analisa Murray, Xinting Li, Madison A. Kennedy, Wei Yang, Zihao Song, Gudrun Schober, Stuart M. Brierley, John O’Neill, Michael H. Gelb, Gaetano T. Montelione, Emmanuel Derivery, David Baker
今回は14本の論文を紹介する。GPCRのシグナル伝達と創薬、甘味・苦味受容体、複数結晶のデータ処理、タンパク質設計、胆汁酸輸送などを取り上げる。
GPCRの構造変化・シグナル制御と創薬(5本)
01 · GPCRの構造状態を可視化する剛直なタンパク質標識の設計
Nature Communications · 公開日/巻号発行日:2026-10-24
著者:Alina A. Vo, Yuan-En Sun, Justin G. English, Michael J. Robertson
Gタンパク質などのシグナル伝達パートナーがないと、小さく動きやすいGPCRはクライオ電子顕微鏡解析で安定して粒子の向きをそろえることが難しく、リガンドが誘導する構造を直接観察するうえでも制約となる。本研究では、生成的タンパク質設計と深層学習による構造アンサンブル予測を組み合わせ、さまざまな融合位置で剛直な基準点となるタンパク質標識を設計した。薬理学的に重要な4種類のGPCRの不活性型構造で手法を検証し、β2アドレナリン受容体には細胞外の基準標識を設計した。これにより、Gタンパク質がなくても細胞内側の重要な構造変化を観察できた。最近の共フォールディング予測モデルとの比較では、既存手法によるリガンド誘導構造の予測には、なお明確な限界があると示された。人工的な基準標識によって観察可能な受容体状態を広げるとともに、予測の検証には実験構造が欠かせないと示す研究である。
注目点 · 設計した剛直な基準標識により、シグナル伝達パートナーなしで観察できるGPCRの構造状態が広がった。
DOI:10.1038/s41467-026-78942-7
02 · 複数のアロステリック部位によるGPCRシグナル伝達の相乗的増強
Science Advances · 公開日/巻号発行日:2026-10-21
著者:Kai Wang, Snezana T. Dimova, John N. Hanson, Abhishek Thakur, Youwei Xu, Yini Liu, Amy E. Moritz, Alexander Goldberg, Bing Xie, Jayachandra Rayadurgam, Feijun Wang, Ashley N. Nilson, Kathryn D. Luderman, R. Benjamin Free, Wen Hu, Jian Zhang, H. Eric Xu, Kevin J. Frankowski, Yue Wang, Lei Shi, David R. Sibley, Youwen Zhuang
GPCRには複数のアロステリック部位があるが、それらが協調してシグナルを増強できるかを理解するには、構造と機能の両面からの証拠が必要となる。本研究ではドパミンD1受容体を対象に、複数のポジティブアロステリックモジュレーターが異なるポケットを同時に占有するクライオ電子顕微鏡構造を解析し、顕著な機能的相乗効果を観察した。検討した条件では、3つの部位がそろって関与するとドパミンの効力が1,000倍以上に高まった。分子動力学解析からは、複数部位の占有が細胞内ループの動きを抑え、活性化に関わる構造を安定化する一方、単一のモジュレーターでは同じ効果を得られないことが示唆された。離れたアロステリック部位が協調する仕組みを説明する枠組みを示した成果である。ただし、この増大幅は実験系での薬理学的効力の変化であり、臨床での有効性や安全性の向上を直接意味しない。
注目点 · D1受容体の複数のアロステリックポケットが協調して活性型構造を安定化し、実験系のシグナル応答を大幅に増強する。
DOI:10.1126/sciadv.aeh3401
03 · 5-HT2AR–βアレスチンシグナルを介した幻覚剤の持続的な抗うつ様作用
Nature Neuroscience · 公開日/巻号発行日:2026-10-23
著者:Licong He, Lingjie Tang, Dongmei Cao, Wenwen Duan, Jing Yu, Pei Zhang, Huiqiong Li, Yumeng Wang, Bing Meng, Huan Wang, Yue Zhou, Wenhao Li, Xiaoyu Li, Zhijie Liu, Lei Zhang, Jianjun Cheng, Sheng Wang
幻覚剤の持続的な抗うつ作用と、知覚の変容を引き起こす性質を、受容体シグナルの段階で切り離せるかは薬理学上の重要な課題である。著者らは構造に基づくバイアスリガンド設計と動物実験を組み合わせ、5-HT2A受容体のβアレスチンシグナルがマウスの比較的長く続く抗うつ様行動効果に関与すると提案した。また、リガンドの解離動態が受容体占有と各経路の応答を左右するとした。特定の実験的な投与条件では、対応する行動効果を維持しながら、評価対象とした幻覚関連の行動異常は検出されなかったと報告している。これらの観察にはマウスとカニクイザルが含まれる。受容体シグナルと行動への影響を切り分けるための機序的な手がかりを示す一方、動物の行動指標はヒトの主観的体験と同じではなく、この結果からヒトの治療法を導くことはできない。
注目点 · 受容体の動態とβアレスチンシグナルが、持続的な抗うつ様効果と行動異常を切り分ける手がかりとして動物研究から示された。
DOI:10.1038/s41593-026-02497-5
04 · mechanoLight:生細胞の5-HT2ARメカノトランスダクションを可視化する遺伝子コード型蛍光バイオセンサー
Proceedings of the National Academy of Sciences · 公開日/巻号発行日:2026-10-27
著者:In-Yeop Baek, Hyunbin Kim, Duwan Kwon, Hahnbeom Park, Jihye Seong
GPCRは化学的なリガンドだけでなく、機械刺激にも応答する可能性があるが、生細胞でこの2種類の活性化を区別するのは容易ではない。mechanoLightは5-HT2A受容体の機械的活性化を検出する赤色蛍光センサーで、流体せん断応力による構造変化に比較的敏感である一方、セロトニンへの応答はごく弱い。これに対し、既存のpsychLight2はリガンドによる活性化をより選択的に検出する。リンカー領域の比較、構造モデリング、シミュレーションは、この違いにセンサーの柔軟性が関わることを支持した。著者らは下流シグナルと変異解析も併せて、受容体による機械刺激変換の構造基盤を検討し、その考え方をほかの機械感受性GPCRにも広げた。受容体の活性化様式を区別するツールを提供するとともに、蛍光プローブが受容体のあらゆる活動ではなく、特定の構造を選択的に読み取る可能性にも注意を促している。
注目点 · mechanoLightは機械刺激に関連する構造を優先的に検出し、GPCRの異なる活性化様式を区別するツールとなる。
DOI:10.1073/pnas.2610816123
05 · 構造に基づく抗精神病薬様作用を持つTAAR1アゴニストの探索
Nature Communications · 公開日/巻号発行日:2026-09-17
著者:Sijie Huang, Heng Liu, Yujin Wu, Joao M. Braz, Divya Kranthi, Brendan W. Hall, Xinyue Zhang, Dmytro S. Radchenko, Yurii S. Moroz, John J. Irwin, Allan I. Basbaum, H. Eric Xu, William C. Wetsel, Brian K. Shoichet
TAAR1はモノアミンのシグナル伝達を調節し、従来のドパミン・セロトニン標的とは異なる抗精神病薬の研究対象となっている。本研究では約6,500万分子を構造ドッキングで評価し、上位候補から55分子を試験して14種類のアゴニストを得た。著者らは、活性型のコンパクトなポケットはアゴニストのスクリーニングに有利だが、初期ヒット率に合わせて最適化したモデルは、その後の親和性向上には不利となる可能性を指摘した。さらなる最適化によってナノモルレベルの候補を得て、予測した結合姿勢はクライオ電子顕微鏡解析でも支持された。脳内曝露量が比較的高い3分子は、マウスのプレパルス抑制モデルで作用を示し、評価したカタレプシーは認められなかった。構造スクリーニングから最適化、動物行動による検証までをつないだ成果だが、モデルでの結果が統合失調症患者での有効性や安全性を直接示すわけではない。
注目点 · TAAR1の構造スクリーニングから動物モデルで活性を持つアゴニストを獲得し、ヒット探索とその後の最適化に伴うトレードオフも明らかにした。
DOI:10.1038/s41467-026-77484-2
甘味・苦味受容体(4本)
06 · ヒト甘味受容体の構造と機能の解明
Nature · 公開日/巻号発行日:2025-09
著者:Zongjun Shi, Weixiu Xu, Lijie Wu, Xiaolei Yue, Shenhui Liu, Wei Ding, Jinyi Zhang, Bing Meng, Lianghao Zhao, Xiaoyan Liu, Junlin Liu, Zhi-Jie Liu, Tian Hua
ヒトの甘味受容体はTAS1R2とTAS1R3からなるヘテロ二量体で、構造の異なる多様な甘味物質を認識するが、その全体構造は長らく不明だった。本研究では全長受容体のリガンド非結合状態とスクラロース結合状態を解析し、非対称な二量体構造を示した。また、スクラロースが主にTAS1R2のハエトリソウ型ドメインに結合することを特定した。変異解析と分子動力学解析は甘味料の認識様式をさらに裏付け、状態間の比較からは、リガンド結合後にほかの構造領域へと伝わる構造変化が明らかになった。化学感覚を担うクラスC GPCRのシグナル伝達を理解するための分子基盤となり、甘味料ごとの認識特性の比較にも役立つ。ただし、主な意義は受容体の仕組みの解明にあり、結合構造だけで個々の甘味料の栄養面や代謝面への影響全体を評価することはできない。
注目点 · 全長甘味受容体の構造から、非対称な二量体構造とTAS1R2によるスクラロース認識の仕組みが明らかになった。
DOI:10.1038/s41586-025-09302-6
07 · ヒト苦味GPCRによるβ-グルコピラノシドのサリシン認識の構造基盤
Cell Reports · 公開日/巻号発行日:2025-05-27
著者:Xin Wang, Cui Zhou, Weizhen Ao, Lijie Wu, Yiran Wu, Weixiu Xu, Shenhui Liu, Qiwen Tan, Ling Wang, Fei Zhao, Junlin Liu, Yuan Pei, Suwen Zhao, Tian Hua
TAS2R16はβ-グルコシド基を含む苦味化合物に比較的高い選択性を示すが、この共通の化学構造をどのように認識してシグナルを活性化するかについて、構造に基づく説明はなかった。本研究では、サリシンによって活性化されたヒトTAS2R16とガストデューシン、Gi1、Gi2タンパク質との複合体をクライオ電子顕微鏡で解析し、リガンドの結合様式とグルコシド基の受容体との相互作用を示した。分子ドッキングと変異実験は、受容体による特定の化学基の認識と、それが活性化および下流のGタンパク質共役につながることをさらに支持した。異なるシグナル伝達パートナーの比較からは、受容体の共役様式の違いも示された。苦味配糖体に対する受容体選択性の構造基盤を提供する成果だが、応用の可能性は今後、対応する機能研究や生理学的研究で検証する必要がある。
注目点 · サリシン結合型TAS2R16の構造が、苦味受容体によるグルコシド基の選択的認識を説明する。
DOI:10.1016/j.celrep.2025.115604
08 · 細胞内の呈味物質とコレステロールによる苦味受容体TAS2R14の活性化
Nature · 公開日/巻号発行日:2024-07
著者:Xiaolong Hu, Weizhen Ao, Mingxin Gao, Lijie Wu, Yuan Pei, Shenhui Liu, Yiran Wu, Fei Zhao, Qianqian Sun, Junlin Liu, Longquan Jiang, Xin Wang, Yan Li, Qiwen Tan, Jie Cheng, Fan Yang, Chi Yang, Jinpeng Sun, Tian Hua, Zhi-Jie Liu
TAS2R14は多様な苦味物質を認識し、口腔以外の組織にも存在する。本研究では、異なるアゴニストと受容体、Gタンパク質からなる複合体をクライオ電子顕微鏡で解析し、典型的なクラスA GPCRとは異なるリガンド配置を明らかにした。通常はオルソステリックポケットに相当する領域をコレステロールが占め、調べたアゴニストはそれぞれ細胞内側のポケットに結合していた。著者らは変異実験と分子動力学解析も併せ、複数の結合部位がどのように広範な物質の認識と受容体活性化を支えるかを検討し、ガストデューシンおよびGi1との共役様式を比較した。苦味受容体が複数部位の協調によって化学感覚を担う可能性を示す結果であり、あるGPCRの典型的な結合モデルを受容体ファミリー全体にそのまま当てはめることはできない。構造から得られた知見は、膜脂質が感知機能に及ぼす影響を今後検証するための根拠にもなる。
注目点 · コレステロールと細胞内側のアゴニスト結合ポケットが、TAS2R14の複数部位による認識機構を構成する。
DOI:10.1038/s41586-024-07569-9
09 · ストリキニーネによるヒト苦味受容体TAS2R46活性化の構造基盤
Science · 公開日/巻号発行日:2022-09-16
著者:Weixiu Xu, Lijie Wu, Shenhui Liu, Xiao Liu, Xiaoling Cao, Cui Zhou, Jinyi Zhang, You Fu, Yu Guo, Yiran Wu, Qiwen Tan, Ling Wang, Junlin Liu, Longquan Jiang, Zhongbo Fan, Yuan Pei, Jingyi Yu, Jianjun Cheng, Suwen Zhao, Xiaojiang Hao, Zhi-Jie Liu, Tian Hua
苦味の感知はTAS2Rファミリーが担うが、実験構造がなかったことが、その認識・活性化機構の理解を妨げていた。本研究では、ヒトTAS2R46と改変ガストデューシンの複合体について、リガンド非結合状態と結合状態のクライオ電子顕微鏡構造を解析した。ほかのGPCRとは異なる独特な構造、活性化に関連する構造的特徴、シグナル伝達パートナーとあらかじめ共役した状態が示された。動きやすさにも領域ごとの差があり、細胞外側は変化しやすく、細胞内側は比較的安定していた。これは、化学物質の認識とシグナル伝達が、異なる階層の構造変化によって協調する可能性を示唆する。苦味受容体ファミリーの初期の構造的な参照例となり、受容体ごとの選択性を今後比較するうえで役立つ。ただし、改変したシグナル伝達パートナーを用いた実験系の結果は、天然の細胞機能と照らし合わせて検証する必要がある。
注目点 · TAS2R46の2状態の構造が、苦味受容体特有の認識・活性化様式を理解するための参照となる。
DOI:10.1126/science.abo1633
複数結晶の回折データ処理(2本)
10 · 高分子結晶学で複数結晶のデータセットを最適に選択するクラスタリング手法
Acta Crystallographica Section D: Biological Crystallography · 公開日/巻号発行日:2013-08-01
著者:J. Foadi, P. Aller, Y. Alguel, A. Cameron, D. Axford, R. L. Owen, W. Armour, D. G. Waterman, S. Iwata, G. Evans
放射光マイクロビームにより10マイクロメートル未満のタンパク質結晶も構造研究に使えるようになったが、微小結晶や損傷を受けやすい結晶では放射線損傷が起こりやすく、複数の結晶から収集したデータをマージする必要が生じる。そのため、結晶間のデータの選別と組み合わせが時間のかかる工程となる。本手法論文はBLENDを紹介し、クラスタリングによって一緒に処理するのに適したデータセットの選択を支援し、複数結晶の解析工程の一部を自動化した。著者らは新たな膜タンパク質の構造解析を通じて応用例を示し、計算による選別支援が、組み合わせを一つずつ手作業で比較する負担を軽減できるとした。狙いは複数結晶のデータの整理と選択であり、結晶数を増やすだけで品質を高めるものではない。マージの結果は、各データセット間に十分な整合性があるかどうかに左右される。
注目点 · BLENDは複数結晶のデータ選択にクラスタリングを用い、選別とマージに伴う手作業を減らす。
DOI:10.1107/S0907444913012274
11 · KAMO:微小結晶のデータ処理自動化に向けて
Acta Crystallographica Section D: Structural Biology · 公開日/巻号発行日:2018-05-01
著者:K. Yamashita, K. Hirata, M. Yamamoto
微小結晶1個から完全な高分解能回折データを得るのは難しいことが多い。複数の結晶から小さな回転角で収集したデータをマージする方法があるが、大量の不完全なデータセットの処理は簡単ではない。KAMOはXDS、CCP4などの既存プログラムを自動化ワークフローに統合する。各データセットを順次処理し、格子定数が近い結果をまとめ、空間群の選択と指数付けの曖昧さの解消を経て、クラスタリング、外れ値の除去、マージを実施し、レポートを作成する。著者らはシミュレーションデータと数百個の結晶に由来する実データで検証し、マージした構造因子振幅をかなりの部分まで自動で得られることを示した。この研究の価値は、従来は分散していた判断と計算の工程をつないだ点にある。結晶間の違いや異常な観測値の品質管理を維持しながら、微小結晶しか得られない難しい試料のデータ処理負担を軽減する。
注目点 · KAMOは複数の微小結晶のデータ処理、クラスタリング、マージを自動解析ワークフローにまとめる。
DOI:10.1107/S2059798318004576
タンパク質設計(2本)
12 · 天然変性領域に結合するタンパク質の設計
Science · 公開日/巻号発行日:2025-07-17
著者:Kejia Wu, Hanlun Jiang, Derrick R. Hicks, Caixuan Liu, Edin Muratspahić, Theresa A. Ramelot, Yuexuan Liu, Kerrie McNally, Sebastian Kenny, Andrei Mihut, Amit Gaur, Brian Coventry, Wei Chen, Asim K. Bera, Alex Kang, Stacey Gerben, Mila Ya-Lan Lamb, Analisa Murray, Xinting Li, Madison A. Kennedy, Wei Yang, Zihao Song, Gudrun Schober, Stuart M. Brierley, John O’Neill, Michael H. Gelb, Gaetano T. Montelione, Emmanuel Derivery, David Baker
天然変性領域は安定した立体構造を持たず、配列や取りやすい構造もきわめて多様なため、これを認識するタンパク質の設計は長年の難題だった。本研究では、標的となる変性ペプチドがさまざまな伸長構造で結合し、その側鎖が相補的なポケットにはまり込むように結合タンパク質を設計する手法を提案した。互いに大きく異なる39種類の非構造化標的を試験し、34種類で約100ピコモルから100ナノモルの親和性を持つ設計タンパク質を得た。標的あたりの試験候補数は平均約22個だった。交差結合実験は、これらの分子が意図した標的に対して選択性を持つことを支持し、細胞内での作用や検出への利用も示された。天然の一定した折りたたみ構造がなくても、特異的な認識分子の設計は可能であると示す成果だが、標的や使用環境が変わった際の性能は個別に検証する必要がある。
注目点 · ペプチドの伸長構造を対象とした設計戦略により、高親和性の認識対象が多様な天然変性領域へと広がった。
DOI:10.1126/science.adr8063
13 · 自然言語から機能性タンパク質をプログラム可能な形で設計
Nature · 公開日/巻号発行日:2026-10-21
著者:Fengyuan Dai, Shiyang You, Yudian Zhu, Yuan Gao, Lihao Fu, Xibin Zhou, Jin Su, Chentong Wang, Yuliang Fan, Qingsong Tan, Xiaoxiao Ma, Xianjun Deng, Letong Yu, Hui Qian, Yan He, Yitao Ke, Zhe Zhang, Chenchen Han, Xing Chang, Liangzhen Zheng, Sheng Wang, Yuan Ji, Kexin Hao, Longxing Cao, Yajie Wang, Anping Zeng, Shunzhi Wang, Chunjun Zhan, Jing Zhao, Tong Si, Jianming Liu, Hongyuan Lu, Fajie Yuan
タンパク質設計には通常、天然の鋳型を用いるか、目標とする機能を人の手で幾何学的・配列的な制約へと落とし込む必要がある。Pinalは、自然言語の記述から候補タンパク質を直接生成し、意図した機能を配列や構造につなげる試みである。著者らは大量のタンパク質とテキストのペアで学習したモデルを紹介した。計算評価では、折りたたみ可能性の予測、記述との整合性、配列の多様性に着目し、蛍光タンパク質、2種類の酵素、代謝に関わるHタンパク質という4つの課題で期待した機能を観察した。このうち設計Hタンパク質は、複数酵素による二酸化炭素固定系で、対応する天然タンパク質を用いた条件の1.7倍の生成物濃度を達成した。自然言語を候補生成の入り口として使えることを支持する研究だが、計算上の整合性は実験で確認する必要があり、数例の成功だけで、あらゆる機能記述を確実に実現できるとはいえない。
注目点 · Pinalは自然言語をタンパク質候補生成の入り口とし、4種類の課題で機能を実証した。
DOI:10.1038/s41586-026-11205-z
その他の論文(1本)
14 · OSTα/βトランスポーターが促進する胆汁酸の側方拡散の構造基盤
Nature Communications · 公開日/巻号発行日:2026-10-23
著者:Kang Xu, Bo-Rui Li, GaoXing Yu- Huang, Fang-Fang Wang, Jie Wang, Bo Wang, Chen-Yang Chu, Guo-Ting Chen, Cong-Zhao Zhou, Yuxing Chen, Wen-Tao Hou
OSTα/βは再吸収された胆汁酸を門脈循環へ戻す役割を担うが、膜を越えて輸送する仕組みは不明だった。本研究では、ヒトのトランスポーターとそのタウロコール酸結合状態のクライオ電子顕微鏡構造を解析した。その結果、一般的なSLCトランスポーターとは異なる7回膜貫通構造を持ち、基質は中央の空洞ではなく、タンパク質表面の側方の溝に位置することがわかった。溝に沿って並ぶ極性残基は基質認識に関与し、変異実験と輸送実験はこれらの接触の重要性を支持した。シミュレーションからも、基質が表面の溝に沿って移動することがエネルギー的に比較的有利であると示唆された。著者らはこれに基づき、小さな構造変化を伴う促進的な側方拡散機構を提案した。構造、機能、シミュレーションがそろって、典型的な交互アクセスモデルとは異なる説明を与え、胆汁酸の恒常性を理解するための新たな分子的視点を加えている。
注目点 · OSTα/βの表面の溝が、促進的な側方拡散による胆汁酸の膜輸送を支える。
DOI:10.1038/s41467-026-78517-6